開催概要
日時 | 2023年6月30日(金)16:40-18:40 |
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場所 | 中京大学名古屋キャンパス1号館清明ホール |
アフリカのコンゴ民主共和国において性暴力の被害者を救う医師を追うドキュメンタリー映画(2022年公開)の上映会を行います。
なぜ同国では20年以上にわたり40万人以上の女性が性暴力の被害を受けているのか、アフリカにおける紛争や性暴力と日本を含む先進国とのつながりはどこにあるのか、ムクウェゲ医師が好きな日本の「利他」という言葉から学べることは何なのか。
「知りたくない事実。考えたくない、世界の仕組み。」に目を向けてみませんか?
映画上映会の後、映画内容に関連した専門家による講演会も開催します。
開催記録
2023年6月30日、中京大学にて中京大学国際学部主催で、映画「ムクウェゲ『女性にとって世界最悪の場所』で闘う医師」の上映会を行いました。参加者は50人を超え、中京大学学生や教員だけでなく外部の方々も参加しました。また、映画上映後はNPO法人「RITA-Congo」の共同代表である華井和代さんをお迎えして、コンゴ民主共和国の実情と映画を元にした話のご講演を聞くことができました。
私たち、中京大学尾和ゼミ3年生は、国際問題について学んでいく中でコンゴの性暴力の問題を目にして、なぜこのようなことが起こってしまっているのかを知りたいと思い、学んできました。学んでいく中で、この実情を多くの人に知ってもらいたいと考え、今回の映画を主催することになりました。
この映画の内容は、コンゴ民主共和国のブカブにあるパンジ病院で産婦人科の医師をしながら国際社会に向けてコンゴにおける状況の改善を訴えているムクウェゲ医師を追ったドキュメンタリー映画です。コンゴは鉱物資源があふれる豊かな国である一方で、その資源をめぐって紛争が起きています。その紛争では、多数の武装勢力が、現地の女性に対して性暴力を行うことで、現地住民や他の武装勢力に恐怖を植え付け、他者が勢力範囲内にある鉱山へ侵入することを妨げようとしています。そこで採れる鉱物は、希少金属とされるタンタル(これは普段私たちが使っているスマートフォンやパソコンに含まれているもの)が多く、採取されたものの多くは私たちが住む先進国に運ばれています。そして、私たちは知らずとも途上国における多くの人の犠牲の上で採られた金属を使って、先進国で何不自由ない生活を送っているのです。これを知った以上、私たちはコンゴで起きている紛争や暴力に対して他人事とは言えないし、無関係であるとは言えないのです。
映画上映の後は、現地に足を運び、ムクウェゲ医師とも直接の関わりがある華井和代さんにご講演いただきました。コンゴに存在する問題は鉱物資源による紛争や性暴力だけでなく、政治や政府組織に広がる慢性化した問題であり、それらの問題を映画の内容と関連付けて、興味深い内容をお話いただきました。華井さんは、NPO法人の代表として、実際にコンゴの実情を日本社会に広めて問題解決に取り組まれているため、直接的なご意見やお話を聞けるとても貴重な機会でした。
映画上映にあたり、準備から広報活動、当日の参加者へのアンケート調査などの全ての活動を私たちゼミ生で行いました。広報活動として、学内でチラシを配ったり、授業の前に多数の先生方にお時間をいただいて宣伝をしたり、SNSを使って広報を行いました。しかし、複数のゼミ生の事後の感想・コメントには、「SNSは拡散力を持っていると考えていたが、実際にSNSで広報してみると思っていたほどの効果は得られなかった。」「社会問題に興味が無い人への広報活動の難しさを学んだ。」という内容がありました。私たちはこのゼミ活動を通して、ゼロから始める広報活動の難しさを体験しました。加えて、人々の社会問題に対する意識が低いということに気づかされました。
広報活動の一環として、映画のことをより理解しやすいように、見終わった後も友人・知人らと共有してもらいたいという想いで、上映前と上映後に渡す独自のパンフレットを作成しました。加えて、参加していただいた方々にアンケートを取らせていただき、上映前と後でどのような心境や考えの変化があったのかを調査しました。アンケートの結果から、映画を通じて、持続可能な開発目標(SDGs)に関連して、人の権利を守ることや目標12の「つくる責任・つかう責任」が重要であることであることに気づけてもらえたのではないかと思います。
私たちゼミ生は今回の映画上映会という活動を通して、このような感想を持ちました。
「この状況を何とかしたいと思ってもあらゆるところで行き詰まり、世界全体でこの問題を解決しなければならないが、そうはいかないことだらけでとてももどかしかった。」
「人々の社会問題・国際問題への関心を高めるためには、やはり日本のメディアの在り方についてもっと見直すべきではないか。」
「遠い国だとは決して思えないようなつながりが私たちにはあるけれど、心に大きな距離があるように思った。」
「国としてできることを世界各国がしていけば、多くの社会問題が解決するように思う。私たちがコンゴの問題点から気づいたように、自分事として考えることの重要性にすべての人が気づけると思う。」
「知識や意識のある私たちが能動的に活動をしていかないといけない。」
「加害者側の心理的状況を考えると、彼らに対する同情を捨て切れないと思った。」
先進国に住んでいるから気づきにくいことがありますが、この世界に住む私たちは多くの問題を抱えています。国際社会の問題に目を向けて、私たちが引き起こしているかもしれないという当事者意識を持たなければなりません。そして、関心を持つだけでなく、知っていること、思ったことを周りに伝えていく責任があります。私たち個人ができることは、多くの人に知ってもらい、より大きな力に変えることだと思っています。私たちゼミ生はこれからも国際問題に目を向けて、それを生み出してる一員なのではないかと考えながらさまざまな問題について学びたいと思います。
(中京大学 国際学部国際学科国際政治学専攻3年 山形理峰)